知らなかったでは済まされない?「うっかり風営法違反」にご注意を
ガールズバー・コンカフェ・飲食店でも、実は「接待」していませんか?
うっかりシリーズ第二弾です。
6月28日から改正風営法が施行され、早速摘発がありました。
これが今回テーマにしている「うっかり風営法違反」の代表格案件です。
最初に説明してしまうと、「接待行為」をしてしまった件です。
(前述の逮捕事案についてはそれだけじゃないかもしれませんが、詳細はわかりませんので今回はテーマのお話だけピックアップで)
■風営法における「接待」とは
風営法(正式には「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」)では、いわゆるキャバクラやホストクラブなど、「接待を伴う飲食店」の営業には「風俗営業1号許可」が必要です。
じゃあ接待って、なんやねん、ということですが、風営法の解釈運用基準においては下記のように書かれています。
接待とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」をいう。
この意味は、営業者、従業者等との会話やサービス等慰安や歓楽を期待して来店する客に対して、その気持ちに応えるため営業者側の積極的な行為として相手を特定して4の各号に掲げるような興趣を添える会話やサービス等を行うことをいう。言い換えれば、特定の客又は客のグループに対して単なる飲食行為に通常伴う役務の提供を超える程度の会話やサービス行為等を行うことである。
わかりにくいですね。
さらに掘り下げて判断基準を見てみましょう。
(1) 談笑・お酌等
特定少数の客の近くにはべり、継続して、談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供したりする行為は接待に当たる。
これに対して、お酌をしたり水割りを作るが速やかにその場を立ち去る行為、客の後方で待機し、又はカウンター内で単に客の注文に応じて酒類等を提供するだけの行為及びこれらに付随して社交儀礼上の挨拶を交わしたり、若干の世間話をしたりする程度の行為は、接待に当たらない。
(2) ショー等
特定少数の客に対して、専らその客の用に供している客室又は客室内の区画された場所において、ショー、歌舞音曲等を見せ、又は聴かせる行為は接待に当たる。
これに対して、ホテルのディナーショーのように不特定多数の客に対し、同時に、ショー、歌舞音曲等を見せ、又は聴かせる行為は、接待には当たらない。
(3) 歌唱等
特定少数の客の近くにはべり、その客に対し歌うことを勧奨し、若しくはその客の歌に手拍子をとり、拍手をし、若しくは褒めはやす行為又は客と一緒に歌う行為は、接待に当たる。
これに対して、客の近くに位置せず、不特定の客に対し歌うことを勧奨し、若しくは不特定の客の歌に対し拍手をし、若しくは褒めはやす行為、不特定の客からカラオケの準備の依頼を受ける行為又は歌の伴奏のため楽器を演奏する行為等は、接待には当たらない。
(4) ダンス
特定の客の相手となって、その身体に接触しながら、当該客にダンスをさせる行為は接待に当たる。また、客の身体に接触しない場合であっても、特定少数の客の近くに位置し、継続して、その客と一緒に踊る行為は、接待に当たる。
ただし、ダンスを教授する十分な能力を有する者が、ダンスの技能及び知識を修得させることを目的として客にダンスを教授する行為は、接待には当たらない。(5) 遊戯等
特定少数の客と共に、遊戯、ゲーム、競技等を行う行為は、接待に当たる。
これに対して、客一人で又は客同士で、遊戯、ゲーム、競技等を行わせる行為は、直ちに接待に当たるとはいえない。
(6) その他
客と身体を密着させたり、手を握ったりするなど客の身体に接触する行為は、接待に当たる。ただし、社交儀礼上の握手、酔客の介抱のために必要な限度での接触等は、接待に当たらない。
また、客の口許まで飲食物を差出し、客に飲食させる行為も接待に当たる。
これに対して、単に飲食物を運搬し、又は食器を片付ける行為、客の荷物、コート等を預かる行為等は、接待に当たらない
こっちは割と具体的ですね。
ガールズバーやコンカフェなどでよくありそうなことにマーカーを引いてみました。
カラオケやゲームなんかは認識されている方も多いのではないでしょうか。
ここで重要なポイントがあります。
よく勘違いされていることですが「お客様の隣に座らなければOK」じゃないです。
緑のマーカー部分をご覧いただくと、いわゆる横接客のお話は触れてすらいません。
カウンター越しでも場合によっては接待に該当するということです。
■ガールズバーは本当に「飲食店」か?
ガールズバーは、その名の通り“女性スタッフがいるバー”という営業形態で、客席との間にカウンターがあるため「キャバクラとは違う」「接待はしていない」とされ、通常は飲食店営業許可で運営されます。
しかし、実際の営業内容が風営法の「接待行為」に該当してしまうと、許可を取っていない限り、無許可営業として違法になります。
とはいえお客さんも女性目当てに通ってしまうような印象がありますから、難しいとこですが…
■「知らなかった」では済まされない
とはいえルールなので守りましょうというお話です。
今回の風営法改正でかなり罰則が重くなりました。
(なんと法人の場合は三億円以下の罰金)
また、今回の摘発案件のように全国報道されてしまうようなこともあります。
知らずにやってしまっていたケースのリスクとしてはとんでもなく重いですので、自店の実態がどうかはよく注意しておく必要があります。
■行政側の取り締まりも強化傾向に
今回のニュースにもありましたが、今後も取り締まりを強化していくというのが警察の意向のようです。
(摘発されなければいいというもんでもないですが。)
今回の風営法改正自体も、悪質ホストクラブがテーマのように言われていましたし、不適切な夜の商売の方がそれだけ多かったことを物語っています。
■どこまでがOK?許可なしで営業できるラインは?
風営法に基づく風俗営業許可を取らずに営業するためには、「接待」を一切行わないスタイルに徹する必要があります。
しかし、一般的なガールズバーやコンカフェのイメージを考えると、現実的にはこのような制限を守りながら営業するのは困難であり、かえって魅力が薄れてしまうこともあります。
そのため、実態が接待行為に近いのであれば、最初から風俗営業の許可を取得することが、安全かつ持続可能な経営につながります。
■まとめ:「グレー」ではなく「ブラック」になる前に
「接待のつもりはなかった」「他の店もやっているから大丈夫」「カウンター越しだから平気」
こうした油断が、知らぬ間に無許可営業という法違反を招くことがあります。
店舗を守り、スタッフを守り、そしてお客様との信頼を守るためにも、自分たちの営業が風営法上の「接待」にあたるかどうかを正しく認識することが大切です。
少しでも不安がある場合は、行政書士など専門家に相談し、許可の取得を含めてリスクを最小限に抑える体制を整えましょう。
“うっかり”では済まされない世界だからこそ、知識と準備が経営を支える鍵となります。