ドン・ファンの遺言に学ぶ ~自筆でもできるけれど~
2018年に亡くなった、いわゆる「紀州のドン・ファン」こと野崎幸助氏。
彼が残したとされる自筆証書遺言は、当初からその真偽や有効性が大きく報道されました。
巨額の遺産をめぐり、遺言が本物なのかどうか、誰が利益を受けるのか、世間の注目を集める事件となりました。
(奥様のくだりも含め)
この出来事から学べるのは、「遺言は残すこと自体が重要であると同時に、その内容や方式が正しくなければ、かえって大きな争いを招いてしまう」という点です。
(田辺市の裁判費用諸々はなんと6500万円超だとか)
ここでは、遺言の種類や特徴を簡単に整理したうえで、遺言を専門かたる士業に相談するメリットについて解説していきたいと思います。
1.遺言の役割とは?
遺言は、亡くなった方が「自分の財産をどう分けるか」をあらかじめ定める最後の意思表示です。
これがあるかないかで、相続の進み方は大きく変わります。
- 遺言がない場合 → 相続人全員で相談することになる。場合によっては家庭裁判所のお世話になることも。
- 遺言がある場合 → 原則として遺言の内容が優先される
つまり、遺言を残しておけば「誰に何を相続させるか」が明確になり、相続人同士のトラブルを防ぐことができます。
一方で、ドン・ファン事件のように「形式に不備がある」「真偽が疑われる」といった場合には、かえって紛争を複雑化させてしまうのです。
余談ですが、遺言には付言事項と呼ばれるものもあり、遺された方々へのメッセージもかけたりします。
2.遺言の種類
遺言の方式はいくつかありますが、主には普通様式遺言と呼ばれる3種類です。
残りの4種類は特別方式遺言というもので、死の危険が迫った時の遺言やら、遭難時やらのお話なので割愛します。
(1)自筆証書遺言
- 遺言者が全文を自筆し、日付と署名押印をすることで成立します。
- 費用がかからず、思い立った時にすぐ書けるのがメリットです。
- ただし、一人で書くことになると、遺言のルールを知らないまま書くケースも多く、結果無効になるリスクがあります。
- 財産目録はパソコン作成や通帳コピーの添付も可能になりました。
- 法務局の「自筆証書遺言保管制度」を利用すれば、紛失や改ざんのリスクを減らせます。
ドン・ファン氏も自筆証書遺言を残したとされていますが、その有効性が裁判で争点となりました。自筆は便利な一方、形式的な不備や真偽をめぐる争いが起きやすいことを示す象徴的な事例といえます。
(2)公正証書遺言
- 公証人が作成する遺言で、公証役場に原本が保管されます。
- 紛失や偽造の心配がなく、方式の不備で無効になるリスクもありません。
- 証人2名の立会いが必要ですが、内容の確実性は非常に高いです。
- 作成に費用はかかりますが、財産の額や複雑さに比べれば安心感は大きいといえます。
- 遺言には検認というものがあるのですが、公正証書遺言では不要です。
※法務局保管の自筆遺言も検認不要です。
もしドン・ファン氏が公正証書遺言を残していれば、その後の大きな混乱は避けられた可能性が高いでしょう。
(3)秘密証書遺言
- 遺言を書いたうえで封書に入れ、封印をして公証人に提出する遺言です。
- 遺言があることは公開したうえで、内容を秘密にしたいときに有効です。
- 自筆証書遺言と異なり、パソコンで作成することも可能です。
- 秘密証書遺言としてのルールを満たしてなくとも、自筆証書遺言のルールを満たしていれば自筆証書遺言として扱ってもらえます。
ドン・ファン氏がこの方式によっていたとしても、結局トラブルにはなったでしょうが。
3.自筆でできるけれど、専門家のアドバイスを受けたほうがよい理由
「遺言なんて自分で書ける」と思う方も多いでしょう。
実際、遺言は15歳未満の方など一部を除き原則誰でも作成可能です。
しかし、注意すべきポイントがいくつもあります。
せっかく書いた遺言の通りにならない場合もあります。
ようするに「書くこと自体はできる」けれど、「正しく効力を持たせる」には法律知識が欠かせません。
そこで、行政書士などの専門家に相談し、内容をチェックしてもらうことが安心につながります。
4.お勧めは公正証書遺言
最終的にもっとも安心できるのは、公正証書遺言です。
- 公証人が関与するため、形式の不備で無効になることはほぼない
- 原本が公証役場に保管され、紛失や偽造の心配がない
- 家族が遺言の存在をすぐに確認できる
- 専門家が関わるため、法的に無理のない内容にできる
費用はかかりますが、それ以上に「争いを防ぐ確実性」が得られる点で、公正証書遺言は強くおすすめできます。
おそらく、どこの士業に頼んでも公正証書遺言をお勧めされると思います。
まとめ
紀州のドン・ファンのケースは、遺言の重要性と難しさを社会に大きく示しました。
遺言は「ただ残せばいい」というものではなく、形式を守り、内容を明確にし、争いを防ぐ形で残すことが肝心です。
- とりあえず残したいなら「自筆証書遺言」
- 確実性を重視するなら「公正証書遺言」
遺言の方式、目的を正しく理解し、ご自身の状況にあわせて選ぶことが、家族の安心につながります。そして、迷ったときには専門家に相談することを強くおすすめします。
くろねこ行政書士事務所では、遺言書作成のご相談を承っています。
無料LINE相談も可能ですので、「自分の場合はどうすればいいの?」という疑問からでもお気軽にお問い合わせください。
