動物取扱業における「標識の掲示義務」を深掘りする

動物取扱業というと、登録手続や施設基準、飼養管理といった実務面に目が向きがちですが「標識の掲示義務」も忘れてはいけません。

あんまり重視されていないというか、正直ちゃんとしてない店舗さんもあったりしますが、法律上の義務でありますので当然違反すれば行政指導や業務停止に発展する可能性もある非常に重要なコンプライアンス要素です。

今回は、この標識掲示義務に特化して掘り下げていきます。

法律上の位置づけ

まず法的な位置づけです。

動物取扱業者は、営業所ごとに標識を掲示しなければなりません。

(動物愛護法第18条)

条文は下記のとおりです。

(標識の掲示)
第十八条 第一種動物取扱業者は、環境省令で定めるところにより、その事業所ごとに、公衆の見やすい場所に、氏名又は名称、登録番号その他の環境省令で定める事項を記載した標識を掲げなければならない。

掲示すべき内容は具体的に定められています。

上記の条文で記された環境省令とは動物愛護法施行規則のことです。

第7条に定めがあります。

(標識の掲示)
第七条 法第十八条の標識の掲示は、様式第九により、次に掲げる事項を記載した標識を、事業所における顧客の出入口から見やすい位置に掲示する方法により行うものとする。ただし、事業所以外の場所で営業をする場合にあっては、併せて、様式第十により第一号から第五号までに掲げる事項を記載した識別章を、顧客と接するすべての職員について、その胸部等顧客から見やすい位置に掲示する方法により行うものとする。
一 第一種動物取扱業者の氏名(法人にあっては名称)
二 事業所の名称及び所在地
三 登録に係る第一種動物取扱業の種別
四 登録番号
五 登録の年月日及び有効期間の末日
六 動物取扱責任者の氏名

上記の1~6までを掲示しなければなりません。

様式があるので、自分で作って掲示します。

とはいえ動物取扱業の登録証には必要事項が書いてありますから、基本的には自分で作ることはなく、登録証を掲示するのが一般的でしょう。

尚、施行規則にある識別章については後述します。

識別章について

事業所以外の場所で営業を行う場合、事業所にどれだけデカデカと掲示していても見えません。

なので、この場合は識別章をつける必要があるということです。

識別章と標識の記載事項の違いは第6号「動物取扱責任者の氏名」を含むか含まないかでほぼ同じです。

これも義務なので注意が必要です。

掲示の方法

次に問題となるのが、実務上の「掲示の方法」です。
法律上は「公衆の見やすい場所に掲示」とされており、なんとなくふわっとしています。

そのせいか、レジの裏側においてあったり、店舗の奥の方に掲示してあったりということもあるようです。

例えばバックヤードに掲示していても、「公衆の見やすい場所」に掲示しているとはとても認められませんよね。

もちろん解釈の幅は多少あるのでしょうが、基本的にはお店に入った際すぐ視認できる位置に掲示するのが適切といえそうです。

うっかり注意点

ご存知のとおり、動物取扱業の登録には更新があります。

施行規則第7条第5号に「登録の年月日及び有効期間の末日」の掲示義務があります。

つまり、登録を更新した際は差し替えなければならないということです。

まぁうっかり忘れるということもないでしょうが、絶対ないとは言えないので注意するポイントかもしれません。

また、これは別件ですがインターネット等で広告を行う場合も同じような項目を掲示する必要があります。(動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法の細目第6条第1項のイ)

第六条 第二条から前条までに掲げるもののほか、動物取扱業は、次に掲げるところにより行うものとする。
一動物取扱業の実施に係る広告については、次に掲げる方法により行うこと。
イ氏名又は名称、事業所の名称及び所在地、動物取扱業の種別、登録番号並びに登録年月日及び登録の有効期間の末日並びに動物取扱責任者の氏名を掲載すること。

これも注意が必要なポイントです。

どんどん脱線して恐縮ですが、SNSなども広告とみなされる場合がありますから、うっかり違反しがちなのはむしろこっちの方かもしれません。

標識の役割

ここまで見ると、標識掲示義務は単なる規制の一つに見えるかもしれません。

しかし、視点を変えると、これは「信頼を可視化するツール」とも言えます。

消費者の立場からすれば、動物を扱う事業者が適法に登録されているかどうかは大きな関心事です。

標識がしっかり掲示されている店舗は、それだけで安心感を与えます。

逆に、標識が見当たらない、あるいは内容が不明瞭な場合、「この店は大丈夫なのか」という不信感につながりかねません。

つまり、標識は単なる義務ではなく、営業上の“信用表示”でもあるのです。
特にペット業界は、命を扱うビジネスであり、感情的な側面が強い市場です。だからこそ、法令遵守の姿勢を可視化することが、顧客獲得やリピートにつながります

特に最近はSNSの発展により様々な方が法令上の義務についての情報発信を行われていたりします。

自分がどうでもよいと思っていても、お客様は意外とみているかもしれません。

最後に

標識掲示義務に違反してどうこうなったという話はあまり聞きません。

が、個人事業主ならともかく法人で多店舗展開などの場合は従業員の法令の不知により義務違反が起こることがあり得るかもしれません。

動物取扱業にかかわらず、コンプライアンスは「大きな違反をしないこと」だけでは不十分です。

むしろ、このような細部の積み重ねこそが、事業の信頼性を支えていると個人的には考えています。

標識一枚。
その扱い方ひとつで、事業者としての姿勢が問われる。
軽く見られがちなこの義務こそ、今一度見直す価値があるかもしれませんね。