資格者不要で動物用医薬品販売?動物用医薬品特例店舗販売業とは
はじめに
動物用医薬品を取り扱う事業と聞くと、動物病院や大規模なペットショップを思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし実際には、ホームセンターや、地域密着型のペット関連事業者などが、一部の動物用医薬品を販売しているケースも少なくありません。
その際に関係してくる制度の一つが「動物用医薬品特例店舗販売業」(以下本稿では特例販売業と略します。)です。
一般的な動物用医薬品販売業よりも限定的な範囲で例外的に販売が認められる制度です。
今回は、特例販売業について、制度の概要、対象となる医薬品、注意点、行政書士に相談するメリットなどを解説します。
動物用医薬品販売業の種類
まず前提として、動物用医薬品を販売するためには、原則として都道府県知事の許可を受ける必要があります。
動物用医薬品に関する規制は、主に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、薬機法)」によって定められています。
動物用医薬品の販売業には、主に次のような区分があります。
- 店舗販売業(いわゆる一般の販売業)
- 卸売販売業(卸売)
- 特例店舗販売業(本稿のテーマ)
- 配置販売業(置き薬)
このうち特例販売業は、限定された種類の動物用医薬品のみを販売できる制度です。
昭和の時代から魚用の医薬品(水槽にいれたりするやつ)がホームセンターでは定番商品ですが、あれをイメージしてもらったらわかりやすいです。
動物用医薬品特例販売業とは
特例販売業とは、特定の動物用医薬品について、動物用医薬品の入手が例外的に販売が認められる制度です。
根拠としては、薬機法第83条の2の3に細かい規定がありますがとってもわかりにくいのでざっくり説明します。
通常、医薬品販売には薬剤師や登録販売者の配置、構造設備基準など、一定の要件が求められます。
しかし、特例販売業では、取り扱う医薬品を限定する代わりに、一部要件が緩和されています。
一番大きな違いとして、店舗販売業のように、薬剤師等の配置が必須とはされていません。
もっとも、「単に簡単な許可」というわけではありません。
営業所ごとに許可が必要であり、許可にあたっては、販売できる医薬品の品目が個別に指定されます。
インターネット販売はできません。
無許可販売、許可範囲外の販売は当然ながら違法です。
それから、一番重要なポイントですが、
「都道府県知事は、当該地域における薬局及び医薬品販売業の普及の状況その他の事情を勘案して特に必要があると認めるとき」に許可を与えることができるようになっていますので、制度趣旨としては、過疎地域等における医薬品供給を補完する側面が強い制度です。
(そもそもこのIT社会どこでもECで購入できちゃうのですが…)
また、許可を取得しても、許可範囲外の医薬品を販売すると行政処分等の対象となる可能性がありますし、様々な届出義務や努力義務などが生じます。
どのような医薬品を販売できるのか
特例販売業で販売できる医薬品について、実際の指定品目運用には自治体差も見られます。
私の経験では栃木と兵庫で若干違いがありましたね。
販売可能な医薬品は都道府県知事が指定しますが、「薬事法事務に係る技術的な助言」では下記の通り示されています。
- 薬理作用が緩慢であり、蓄積性又は習慣性がないこと。
- 経時変化が起こりやすくないもの。
- 剤型、用法及び用量等からみて、使用方法が容易であること。
- 容器又は被包が壊れたり破れたりしにくいもの。
※具体的には、整腸剤、栄養剤、外用剤、観賞魚用薬浴剤、殺虫剤等
一般的には、比較的リスクが低いとされる動物用医薬品が対象となりますが、上記のような理由から具体的な品目は個別に確認が必要です。
ここで重要なのは、「動物用医薬品なら何でも販売できるわけではない」という点です。
たとえば、要指示医薬品については、獣医師の指示が必要となるため、特例販売業で自由に販売できるものではありません。
(そもそも通常の店舗販売業でも指示書などがいります。)
指定医薬品も原則として特例店舗販売業の対象外です。
この要指示医薬品、指定医薬品は動物病院で使っている薬をイメージいただければと思います。
また、人用医薬品を動物向けとして自由に販売できるわけではありません。
行政処分や罰則の可能性
無許可販売や許可範囲外販売が発覚した場合、行政指導だけで終わらないことがあります。
悪質なケースでは、
- 業務停止
- 許可取消
- 刑事罰
などにつながる可能性もあります。
また、動物用医薬品は、食品安全や畜産分野にも関係するため、社会的影響が大きい分野です。
行政も比較的厳しく目を光らせていますし、通報窓口もしっかり準備されています。
一度問題が発生すると、事業者の信用低下にも直結します。
まぁ、基本的には無許可のところに卸してくれるところはありませんし、実際無許可販売が起きるなんてことは早々ありませんが…
行政書士に相談するメリット
動物用医薬品の制度は、薬機法だけでなく、関連通知や自治体運用も関係してくるため、実務上わかりにくい部分が少なくありません。
また、
- そもそも許可が必要か
- どの販売区分になるか
- 現在の商品が医薬品に該当するか
- 広告表現に問題がないか
など、事前確認が重要となる場面も多くあります。
行政書士は、許可申請書類の作成だけでなく、営業スキーム全体の法的整理や、コンプライアンス面の確認についてもサポート可能です。
特にペット関連事業では、「良かれと思っていた行為」が法令違反となってしまうケースもあるため、早めの確認がリスク回避につながります。
まとめ
動物用医薬品特例販売業を含む動物用医薬品販売業は、「自由に販売できる制度」ではありません。
販売可能な医薬品、営業方法、広告内容などには細かなルールが存在します。
特に、
- ネット販売
- SNS広告
- サプリメントとの境界
- 人体用医薬品の扱い
などは、近年トラブルが起こりやすい分野です。
動物関連ビジネスは、飼い主との信頼関係が重要な業界です。法令遵守は単なる義務ではなく、事業継続やブランド価値にも直結します。
「うちは許可が必要なのか」
「この商品は販売できるのか」
「広告表現は問題ないか」
こうした疑問がある場合には、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
余談:よくある(らしい)トラブル
「サプリメントだから大丈夫」ではない
ペット向け商品では、「サプリメント」と表示されていても、効能効果の標榜次第では問題になることがあります。
たとえば、
- 病気が治る
- 炎症を改善する
- 感染症予防
など、医薬品的な効能効果を広告する場合には注意が必要です。
商品名や広告表現によっては、薬機法にしっかり抵触しますので思ってる以上に大事になるリスクがあります。
今日では割と常識的な知識ですから、この辺はご注意くださいまし。
海外購入の医薬品
近年は、SNSやインターネットを通じて、海外製医薬品や未承認製品が流通しているケースも見受けられます。
インターネットで購入する場合、適法性の確認は極めて重要です。
この点については農林水産省も注意喚起していますので、基本的にはよっぽどの理由があって獣医師の指示のもと使う等の理由がなければわざわざ海外製医薬品を使う理由はないと思います。
動物たちの体に何らかの影響を及ぼすからこそ医薬品なのであって、正規流通でないものを利用するのは非常に怖い気もしますね。
