動物取扱業はどこから?「業として」の解釈について
※本コラムでは、特に断りのない限り「動物取扱業」は第一種動物取扱業を指します。
動物の「販売」「保管」「貸出し」「訓練」「展示」「競りあっせん」「譲受飼養」を業として行う場合には、第一種動物取扱業の登録が必要です(動物愛護管理法第10条第1項)。
無登録で営業した場合には100万円以下の罰金という重い罰則の対象となるため注意が必要です。
では、自宅で生まれた子犬を有償で譲り渡す場合はどうでしょうか。
登録が必要なケースと不要なケースの境界はどこにあるのでしょうか。
SNSなどでもたびたび議論になりますが、その鍵となるのが「業として」という言葉です。
今回は、この「業として」の考え方について解説します。
なお、本稿は一般的な考え方を解説するものであり、実際に動物取扱業に該当するかどうかは個別事情によって判断されます。
また、最終的な判断権限を持つのは行政機関であり、個人の判断だけで「大丈夫だろう」と進めることはお勧めできません。
このタイトルを書いていてあなたの風邪はどこから?というCMを思い出しました。
全く本稿と関係ないですが、私の風邪はだいたい喉からです。
「業」とはなにか
辞書的な意味での「業(ぎょう)」とは、「なりわい」や「職業」を指します。
簡単に言えば、お金を得る目的で継続的に行う仕事というイメージです。
もっとも、法律上の「業として」は本人の主観だけで決まるものではありません。
「趣味のつもりだった」「仕事ではないと思っていた」と本人が考えていても、客観的に見て事業として行われていると判断されれば、「業」と評価される可能性があります。
もし本人の意思だけで決まるのであれば、誰でも「業ではありません」と言えてしまい、法規制そのものが機能しなくなってしまうからです。
法律ごとに異なる「業として」の考え方
「業として」という表現は、動物愛護法だけで使われているわけではありません。
行政書士法、弁護士法、宅地建物取引業法など、多くの法律で用いられています。
もっとも、「業として」の具体的な解釈は法律ごとに微妙に異なるようです。
そのため、他の法律における判例や解釈をそのまま動物取扱業へ当てはめることはできません。
ただし一般論としては、
- 営利性
- 事業性
- 反復継続性
などの事情を総合的に考慮して判断されることが多いとされています。
「業として」に該当するか
一般的には、次のような観点から判断されます。
(1)事業性があるか
まず重要なのが、その行為が客観的に見て事業として行われているかどうかです。
例えば、自宅で生まれた子犬を知人が引き取ることになり、実費程度の負担を受けたというケースがあります。
このような事例だけを見れば、多くの方は事業という印象を受けないでしょう。
一方で、
- 犬舎名を掲げる
- SNS等で継続的に譲渡先を募集する
- 不特定多数へ販売する
- 利益を得ることを目的としている
といった事情があれば、事業性を肯定する方向に働く可能性があります。
(2)反復継続しているか
次に問題となるのが反復継続性です。
一般に「業」と言われる以上、継続的な活動であることが想定されます。
何度も繰り返し行われている場合には、「業」と判断される可能性が高くなります。
もっとも、「1回だから絶対に大丈夫」とまでは言い切れません。
実際には、その行為の内容や目的、準備状況なども考慮されます。
「1回なら大丈夫」とは限らない
他の法令分野では、「反復継続の意思」が認められる場合には、例え1回の行為であっても反復継続性を肯定しうることを判示した判例があります。
動物取扱業についても、単純に回数だけで判断できるものではありません。
例えば、
- 今後も継続して行う前提で募集している
- 営業活動を行っている
- 事業としての体制を整えている
といった事情があれば、実際の取引回数以上に重く評価される可能性があります。
行政実務上の考え方
環境省の中央環境審議会動物愛護部会では
- 社会性を持っている
- 反復継続性がある
- 営利性がある
上記を総合的に判断してそれぞれ決める。と考えているようです。
今まで書いてきたことと似たようなものですね。
一方、岡山県では反復継続性についてわかりやすい目安をホームページに公開されています。
「年当たり2回又は2匹のいずれかを超える取扱いがある場合は、当該要件に該当します。」
出展:岡山県ホームページ
これを素直に受け取ると3匹のわんちゃんであれば反復継続性があるとみなされるおそれがあります。
某専門書では「いずれかを超える」ではなく「いずれか以上」と解釈していたので、1匹=1回と解釈するのがわかりやすいのかもしれませんね。
尚、これは岡山県が示している判断の目安であり、全国一律の基準であるかはわかりません。
地域によって運用に差が生じる可能性もあるため、必ず管轄自治体へ確認するようにしましょう。
業に該当するか迷ったら
結論として、自分だけで判断しないことが重要です。
SNSなどでは、
- 子犬・子猫の有償譲渡(販売に該当する可能性)
- お散歩代行(保管に該当する可能性)
- 自宅でのペット預かり(保管に該当する可能性)
を募集しているような方をお見掛けすることがあります。
詳細がわからないのでいちいち突っ込みませんが、もしかすると無登録の業者さんかもしれません。
何か動物さんの事業者にお願いする場合、大切な家族をお任せする相手ですから、コンプライアンスのきっちりしたところを選ぶのがお勧めです。
- きちんと登録している業者を選ぶ
- 広告に必須事項が網羅されているところを選ぶ
動物取扱業の広告には必須記載事項があります。
また、住所などから各都道府県等のホームページにて動物取扱業の登録の有無を確認することも可能です。
広告の記載事項なんて細かいことですが、細かいことまできっちり守っている業者さんって、すごく安心だと思います。
動物取扱業に該当するなら適切な登録を
動物取扱業の登録制度は、事業者を縛るためだけの制度ではありません。
適切な飼養管理を確保し、動物福祉を守るための制度でもあります。
登録を受けた事業者には様々な遵守事項がありますが、その分、適法に事業を行うことができます。
「自分のケースは登録が必要なのだろうか」
「開業したいが何から始めればいいのか分からない」
そのような場合は、まず管轄自治体や専門家へ相談してみましょう。
当事務所では、第一種動物取扱業登録のサポートを行っております。
ご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
